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    日々、偶景から

                



                 練馬区大泉学園町の今はない古書店「ポラン書房」。
                 毎週一度は(多い時は三度)立ち寄った。
                 ここで出会った本から、どれほど〈考えるヒント〉、〈感ずるヒント〉を得たか、もはや数えきれない。
                 和光市でネット販売は継続しているが、書店とは欲しい本を買いに行くところであるよりも、何が欲しいかを発見しに行くところなのだ。
                 
                 




                 『ポラン書房』の文学棚。『転落譚』がある。
                 作中に挿入されている戯曲「本を探しています」を2010年にここで上演した。
                 周りの本の凄み。永田耕衣の『山林的人間』や、目取真俊の『群蝶の木』も見える。





                 「ポラン書房」にあった、ゲルニカのモチーフによるピカソのリトグラフ。
                 迷った末、購入を諦めたのだが……。いまはどこに?




                 『ポラン書房』のマスコットのように座っていたゴリラのぬいぐるみ。
                 どこに貰われていったのか。いや、店主の石田さんの手元に健在に違いない。そのはずだ。





                 この本の迷路も懐かしい。
                 古書店の魅力は、ことのほか知の迷路をさまようことにある。
                 『ポラン書房』の迷路の奥行きは深々と存在していた。





                 カウンターの上の飾り。井上ひさしの色紙もあった。
                 掛け時計の手巻きは店主の石田恭介さんのルーティーンだった。
                 ある意味で、その反デジタルな行為こそ、象徴的に「ポラン書房」の書物の魅力的な迷路作りに結び付いていた。




                 閉店の近い「ポラン書房」に向かうある日、道路際の塀の孔に、落し物の手袋が差し込んであった。
                 ふいに、失われた古書店の記憶の傷が甦る。
                 池袋の夏目書店、明大前の小林書店、荻窪の深澤書店、ささま書店、それから洋書の早稲田進省堂や神保町の北沢書店も。
                 それから、それから…。




                 


 

          




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