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    日々、偶景から



                  

                 千葉県館山、駅舎から海岸通りを見る。今冬、千葉県立安房高校へ出前講義に出かけた。
                 熱心な生徒たちで、好印象。ただし、この高校の卒業生である中沢けいの『海を感じる時』
                 を誰も読んでいないことは意外だった。南ヨーロッパの白い家並みを模した海岸通りの椰子
                 の木々が、真冬の猛烈な寒風にさらされていた。このちぐはぐ感がおもしろい。


                 冬の館山海岸の夕景。右手には遠く富士山が見えた。


                 館山駅で見た「くじら弁当」の幟。
                 鯨肉は子ども時代に嫌というほど食べたけれど(ベーコンもステーキも刺身も)、
                 懐かしさでこの「房州名物」に心が動く。しかし、昼にふらりと入った小料理屋
                 (客は私だけ)で味わった、店主が朝釣ったというアイナメの刺身に感激したばか
                 りなので、鯨はやめにした。

                 






             2014年秋、近くも遠いような記憶の風景から

                 致道館(酒井氏庄内藩校)・山形県鶴岡市。聖廟の門から、藩校の教場を見る。
                 文化2年(1805)、庄内庄内藩の藩政を立て直すために創建された。
                 館内には教科書の儒教漢籍が並ぶ。


                 致道館教場の書見台。部屋の静寂に、低く音読の声が満ちる。
                 「庭をへだてた向こうの棟から、少年たちの素読の声が聞こえてくる。会所と同居
                  している藩校到道館では、いつものように授業が行われているようだった。かす
                  かなその声をのぞいて、建物はしずまりかえっている。」(藤沢周平「領内騒然」)


                 大寶館
                 鶴岡ゆかりの人物資料館。1915年開館。大正初期のバロック風の擬洋風建築。
                 中に館山樗牛の生誕の部屋が移築されている。本多猪四郎(『ゴジラ』の監督)、
                 柏戸(47代横綱)、田沢稲舟(22歳で亡くなった明治の女性作家。師の山田美妙と
                 結婚するも破婚)が、当地の出身であることを改めて知る。)


                 藤沢周平記念館。
                 
言うまでもなく、鶴岡でもっとも顕彰されている作家は藤沢周平。いっぽう、同じ
                 郷土の生まれの丸谷才一は、わずかに「大寶館」の二階に写真と著作数冊が飾って
                 あるだけ。当然、理由はあるだろうし、本人自身も望んだわけではないだろう。


                   鶴岡カトリック教会。1903年(明治36年)創建。
                   庄内藩家老の武家門と天主堂との取り合わせに心惹かれる。


                 鷺だろうか。鶴岡の内川通り、鷺らしき鳥が屋根で動かない。
                 この赤錆びたトタンの廃墟のような店舗と絶妙に似合い、見惚れてしまった。


                 鷺のいた店舗の近くで見つけた古書店(阿部久書店)。明治20年創業という。
                 もちろん、郷土資料が豊富。前から探していた広告文の名作アンソロジーを購入。


                 花影の美。酒田の豪商であった本間家の別荘「静遠閣」。
                 階段の上り口にある花の彫り物が、壁に映る影も鑑賞するようにデザインされている。


                 酒田市、出羽大橋から最上川を見る。ライン川を思い出す。


                 最上川を泳ぐ鵜。いったん潜ると、思わぬところから浮上し、また潜る。


                 鴨の大群。最上川、出羽大橋から。


                 山居倉庫(酒田市)。
                 明治26年(1893)に旧酒田藩主が、米の保存と集積を目的に建造。全12棟が並ぶ。


                 山居倉庫は、今でも現役で使われている。


                 山居倉庫裏の錆びた消火栓。なぜか錆が目に留まる。


                 山居倉庫の裏に見事な欅の並木が続く。木漏れ日の心地よさ。


                 丙申堂(鶴岡)。
                 庄内藩の豪商として知られた旧風間家が、明治29年、武家屋敷跡に住居兼店舗として
                 建てた屋敷。これはその奥座敷にある小部屋。藤沢周平原作の映画『蝉しぐれ』(黒土
                 三男監督)撮影の使った部屋だという。


                 丙申堂の石茅葺屋根。茅葺の上に、石を載せた独特なもの。


                 同上。小石の間に苔が生え、屋根がまるで川原のように見えた。


                 丙申堂の2階から中庭を覗く。


                 万代橋(新潟市)。長い信濃川の終点近く、流れは緩やかだった。


                 万代橋の上から信濃川を眺める。
                 ドイツのコンスタンツの橋の上から見たラインの流れを思い出す。


                 新潟市、信濃川の湖畔での午後の休息。


                 同上。晴天、そよ風。ゆるやかに流れる川と時間。
                 この午後の休息の切ないほどの幸福感は、いまだに忘れ難い。







                  珈琲愉楽の処々

                 さぼうる(神保町)
                 有名店で満席だが、一人だとたいてい席がある。山小屋風の建物の中は、穴倉のよう
                 で、思索にはよい。穴倉席の上に、薄明かりがあって、壁のおびただしい落書きサイ
                 ンを照らす。


                 CAFE TERVE!(池袋)
                 珈琲とともに、自家製のパンがまことに香ばしく美味しい。いつも小ぶりのパンと
                 いっしょに珈琲を飲む。小さな店で、パソコンを開いて仕事をするのは気がひける
                 が、読書ははかどる。
                 


                  

                 茶房 銀のポスト(蓼科)
                 長野県の蓼科、プール平にある喫茶店。普通の椅子席もあるが、この店のユニークな
                 ところは、庭を眺めながら、広い畳の部屋で珈琲が飲めること。その部屋のたたずま
                 いが、懐かしい気分を呼びおこす。


                 CAFE KICHI(熱海)
                 熱海駅から5分。芳香のきわだつ珈琲を出す。隠れ家的な雰囲気がある。
                 函南に住んでいらしたK先生と三島で歓談した後、途中下車してよく立ち寄った。
                 


 

          




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