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新聞連載「教室も空を飛ぶ」について 沖縄講演、それから〈かくれんぼの文学 お知らせ トップに戻る 




沖縄講演および20世紀文学会研究発表から考えたこと

2011年1月29日(土)、沖縄キリスト教学院大学で講演しました。

「英文学研究ネットワークの再構築」(提供:公益信託 宇流麻学術研究助成基金)と題するシンポジウムに先立ち、「〈速度〉のポリティックス―文学を再考するために」というタイトルで講演を行いました。
当日のもう一つの講演、山里勝己氏(琉球大学教授)の「アメリカをめぐる軌跡――沖縄のアメリカ文学研究について」は、19世紀初頭から中ごろにかけての琉球の通事たち、とりわけペリー沖縄来航時の牧志朝忠の複雑な政治的役割の煩悶と文化的葛藤に焦点をあてながら、「危機」の歴史としての沖縄の現実と文学研究の意味をダイナミックに論じたまことに見事なものでした。これはいずれ著作として読むことができる日が来るはずです。

若手研究者たち6名の研究発表とパネルディスカッションも、刺激に満ちたものでした。アイルランド文学にせよ、イギリス・ロマン派にせよ、アメリカ先住民族にせよ、どの研究者も沖縄的主体がどのように研究対象と相互的な批評性を持ち得るか問いつづけながら考察を進めていて、思うところ多く、こうした場で感動を覚えるのも私にとって初めての経験でした。
このときの報告書が浜川仁氏(沖縄キリスト教学院大学准教授)の努力によって、「英文学研究ネットワークの再構築」(非売品)としてまとめられています。お読みになりたい方は、まだ数部ほど在庫があるそうですので、下記の浜川研究室のメールでお問い合わせください。
hamagawah@ocjc.ac.jp


私は〈速度をめぐるアイロニー〉、〈遅読と読みの地平〉、〈周縁と前線――遅さのダイナミックス〉、〈沖縄から速さを揺さぶる〉といったテーマにそって、あらたな沖縄学の可能性を提言しました。
この「速度」の問題はずっと気にかかっているテーマです。6月11日の20世紀文学会の研究報告でもこのテーマを再考し、今回は主として3・11以降の言説空間を念頭に置いて話をしました。すると、発表中、急に一冊の本としての構想が思い浮かび、帰りの電車の中で目次を作るにいたったのです。翌朝、「かくれんぼの文学」なるタイトルもできました。さて、どのように時間のやりくりをして実現するか、もっか思案の最中です。折があれば、このホームページも利用したいと思っています。